Introduction

イングランド郊外にたたずむ大邸宅“ダウントン・アビー”で暮らす貴族グランサム伯爵一家の内情を、センセーショナルかつ当時の社会背景を盛り込みながら描いた「ダウントン・アビー」。名作「名探偵ポワロ」ほか良質のドラマ作りで知られる、イギリス最大の民間放送局ITVで2010年9月より放送スタートして以来、世界200以上の国と地域で放送され人気を博している大ヒット・シリーズだ。

物語は1912年、将来家督を相続するはずだったグランサム伯爵の長女メアリーの婚約者の訃報から幕を開ける。男性だけに限定された相続制度のため、一家には3人の娘がいるが、新たに一番近親の男性で弁護士マシューを屋敷に招き入れることに。伯爵自身はマシューを気に入るが、伯爵の母バイオレットと妻コーラ、メアリーは庶民的なマシューの存在が気に入らず、それぞれに策略をめぐらせる。同時に、本作では邸宅で働く多くの使用人たちの人間模様が描かれる。住む世界が違うものの、常に伯爵一家と緊密な関わりを持つ彼らの間に、新たに伯爵付きの従者としてやってきた脚の不自由なベイツの存在が波紋を投げかけていく。

相続問題をめぐる上流社会の愛憎渦巻く人間関係や、階級制が存在するいわば格差社会の縮図とも言うべき邸宅の内情は、娯楽性に富みつつ社会派の要素も色濃く見応えがある。そうした本作の普遍的な面白さは、文化的背景が異なるイギリスの時代劇でありながらアメリカでも異例の大ヒットを記録しており、シーズン1はエミー賞(ミニシリーズ/TVムービー部門)において作品賞、監督賞ほか6部門で受賞。さらにゴールデングローブ賞(ミニシリーズ/TVムービー部門)でも作品賞を受賞するという快挙を成し遂げた。

企画・製作総指揮・脚本を手掛けて、密度の濃い群像劇により高い評価を得ているのは、映画『ゴスフォード・パーク』でアカデミー賞®脚本賞を受賞したジュリアン・フェローズ。キャストには、2度のアカデミー賞®受賞を誇り、本作ほかでもエミー賞に輝く名優マギー・スミスを筆頭に、イギリスの新旧演技派が顔をそろえている。また、舞台となる大邸宅には実在の古城でのロケが含まれているほか、時代設定に忠実に再現された豪華な衣装や調度品といった美術セットが作り出す重厚感のある映像美も圧巻だ。